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最高裁判所第一小法廷 昭和49年(オ)602号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人千曲運輸株式会社代理人岡安秀、同宇都宮健児の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

上告人近鉄大一トラック株式会社代理人藤井宏の上告理由一及び二について

原判決が適法に確定したところによると、上告人近鉄大一トラック株式会社(以下上告人近鉄大一という。)及び上告人千曲運輸株式会社(以下上告人千曲運輸という。)は、いずれも貨物運送を業とする会社であるが、上告人近鉄大一は昭和四二年一一月ごろから上告人千曲運輸よりその保有する貨物自動車を傭車してきたところ、あらたに長野県下及び山梨県下に所在する上告人近鉄大一の各営業所相互間における定期路線運送を開設したことにともない、昭和四三年五月はじめごろから、上告人千曲運輸所有の本件加害車を運転手付きで右定期路線運送用として借り上げ、右各営業所において上告人近鉄大一が荷主から注文を受けた荷物の運送にあたらせるようになり、本件事故も、加害車が同上告人の小諸営業所から甲府営業所に赴く途中で発生したものであり、右定期路線を運行するにあたつて加害車は、同上告人が発行する運行表の指示するコース、スケジュールに従い、また、各営業所における荷積及び荷降も、必ず同上告人の係員の立会と荷物の確認をうけておこなうなど、もつぱら同上告人の指揮監督に服して右定期路線の運送業務に従事していたものであり、かつ、同上告人が運送依頼者から受け取る運賃のうち四〇パーセントをみずから取得し、残余の六〇パーセントを上告人千曲運輸が取得する約定であつたというのであつて、右事実関係のもとにおいては、本件事故当時の加害車の運行は、上告人近鉄大一の支配のもとに、同上告人のためになされたということができ、同上告人は自動車損害賠償保障法三条の運行供用者責任を負うものというべきであり、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。所論のように上告人千曲運輸が上告人近鉄大一に対し専属的、従属的関係に立つものではなく、下請負人として加害車を運行の用に供していたものとしても、右のように認めることの妨げとなるものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同三について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)

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